「睡眠障害」が診療科名に追加へ
開業医が知っておきたい新しい診療科表示の動き
近年、日本では睡眠に関する悩みを抱える人が増えています。不眠症や睡眠時無呼吸症候群など、睡眠に関わる疾患は生活の質(QOL)に大きな影響を与えるため、医療機関への相談ニーズも高まっています。
こうした状況を踏まえ、厚生労働省は医療機関が掲げる診療科名に「睡眠障害」を追加する方針を示しました。医道審議会の専門部会で了承され、今後政令改正を経て、今春から夏頃までに施行される見通しとなっています。
この制度変更は、患者の医療アクセス向上だけでなく、今後開業を検討している医師にとっても診療科戦略に影響する可能性があります。本コラムでは、そのポイントを整理します。
睡眠障害とはどのような疾患か
睡眠障害とは、睡眠に関連するさまざまな疾患の総称です。代表的なものには以下があります。
・不眠症
・睡眠時無呼吸症候群
・過眠症(ナルコレプシーなど)
・概日リズム睡眠障害
・レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)
厚生労働省の資料などによると、日本人の約5人に1人が睡眠に何らかの問題を抱えているとされています。
近年はスマートウォッチやスマートフォンアプリなどの普及により、自身の睡眠状態を把握する人も増えており、医療機関への相談ニーズは今後さらに高まると考えられています。
なぜ「睡眠障害」が診療科名に追加されるのか
現在、睡眠障害の診療は主に以下の診療科で行われています。
・内科
・精神科
・耳鼻咽喉科
・呼吸器内科
・小児科
しかし、患者にとっては
「どの診療科を受診すればよいのか分からない」
という問題が指摘されてきました。
このため、日本睡眠学会は2024年に厚生労働省へ要望を提出し、
「睡眠障害」という名称を診療科名に追加することで医療アクセスを改善するべき
と提案していました。
今回の制度改正は、こうした要望を受けたものです。
診療科名の表示ルールとは
医療機関が看板や広告に掲げる診療科名は、医療法により規制されています。医師が自由に名称を付けることはできません。
現在の制度では、
単独で標榜可能な診療科名
| 内科、外科、精神科、アレルギー科、リウマチ科、小児科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科(産科、婦人科)、眼科、耳鼻いんこう科、
リハビリテーション科、放射線科(放射線治療科、放射線診断科)、病理診断科、臨床検査科、救急科 |
これらは単独で表示できます。
さらに、
組み合わせで表示できる診療領域
例
・呼吸器
・糖尿病
・腎臓
・感染症
・美容
などがあります。
今回の改正では、この組み合わせ型の診療科名に「睡眠障害」が追加される予定です。
想定される診療科表示
制度が施行されると、例えば以下のような標榜が可能になります。
・睡眠障害内科
・睡眠障害精神科
・睡眠障害小児科
・精神科(睡眠障害)
などです。
つまり、既存の診療科と組み合わせることで、睡眠医療を明確に打ち出すことが可能になります。
なお、医師1人が広告として掲げられる診療科名は、原則として2つまでとされています。
開業医にとっての意味
今回の制度変更は、開業医にとって以下のような意味を持つ可能性があります。
① 睡眠医療の需要拡大
睡眠に関する悩みは非常に多く、潜在患者数も多い分野です。
特に
・働き盛り世代
・ストレス社会
・スマートフォン使用増加
・高齢化
といった社会背景から、今後もニーズは増えると考えられます。
② 診療科差別化の可能性
開業医にとって重要なのは診療コンセプトの明確化です。
例えば
・内科+睡眠障害
・精神科+睡眠障害
・耳鼻咽喉科+睡眠障害
といった形で、特定分野を打ち出すことにより、
地域医療の中で差別化を図ることが可能になります。
③ 患者の受診行動の変化
患者は「分かりやすい看板」を頼りに医療機関を選びます。
これまで
「不眠症はどこに行けばいいの?」
と迷っていた患者が、
「睡眠障害内科」
と書かれている医療機関を選ぶ可能性は高くなります。
注意点:専門性の担保も重要
専門部会では、以下のような意見も出ています。
「単なる睡眠薬の安易な処方とならないよう、専門的診断に基づく質の高い医療が提供されることを期待する」
つまり、
単に名称を掲げるだけでなく、
・適切な診断
・睡眠衛生指導
・生活習慣改善
・必要に応じた専門医紹介
など、質の高い医療提供が求められる分野でもあります。
今後のスケジュール
制度改正の流れは以下の予定です。
1 学術団体への意見照会
2 パブリックコメント
3 政令改正
4 制度施行
施行は2026年春〜夏頃と見込まれています。
診療科名の見直しは2008年以来約18年ぶりとなる大きな変更です。
まとめ
厚生労働省は、医療機関が掲げる診療科名に**「睡眠障害」**を追加する方針を決定しました。
制度が施行されると、
・睡眠障害内科
・睡眠障害精神科
・睡眠障害小児科
などの標榜が可能になります。
日本では約5人に1人が睡眠の問題を抱えているとされており、睡眠医療は今後も需要の高い分野です。
開業を検討している医師にとっては、
・診療コンセプト
・専門領域の打ち出し
・地域医療での差別化
を考えるうえで、今回の制度変更は一つのヒントになるかもしれません。
今後の制度施行の動向にも注目していきたいところです。
引用リンク:厚生労働省 睡眠障害の標榜について



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