クリニック開業成功のための立地選定戦略:電車社会と車社会における最適解②車社会(郊外)編
はじめに
クリニックを開業する上で、立地選定は成功の鍵を握る重要な要素です。立地によって、集患数や経営の安定性に大きな差が生じます。今回は、電車社会と車社会という異なる地域編特性を踏まえ、それぞれの状況に合わせた最適な立地選定戦略について詳しく解説していきます。第2部の車社会(郊外)編です。
車社会(郊外)における立地選定
車社会では、駐車場の有無や道路のアクセス性が重要です。ロードサイドやショッピングモールなどが、一般的な開業場所となります。
車社会(郊外)におけるクリニックの成功する立地選定
1. 駐車場の確保: 患者の利便性を最優先に
車社会でのクリニック運営において、十分な駐車スペースの確保は必須条件です。駐車場がない、または台数が限られていると、患者が訪れにくくなり、集患が難しくなります。特に、車を利用することが多い地域では、広い駐車場を完備しているクリニックが優位に立ちます。さらに、駐車場がクリニックのすぐ近くにあり、アクセスがしやすいことが患者にとっての大きな利点となります。
2. 道路のアクセス性: 主要道路に面した視認性の良い場所が理想的
ロードサイドの立地は、飲食店やスーパー、衣料品店などが多く集まるため、クリニックにとっても高い集患が期待できる場所です。特に幹線道路沿いに面していると、視認性が良く、通勤や買い物の途中に通りがかるドライバーにも気づいてもらいやすくなります。大きな看板を設置し、遠くからでも視認できるように工夫することで、初めての患者でも訪れやすくなります。また、入りやすい道路沿いであることが患者の利便性を高めます。
しかし、交通量が多くても、近隣住民の利用が少なかったり、駐車場の入りにくさがある場合には、来院のハードルが上がってしまうこともあります。また、狭い道や一方通行の道路に面している場合、患者が駐車場にたどり着くまでの負担が増え、他のクリニックに流れてしまう可能性もあります。
患者が入りやすく、アクセスしやすい場所を選ぶことが成功のカギとなるでしょう。
3. 周辺施設との連携: 人の集まる場所が集患力を強化
スーパーマーケットやドラッグストアなど、日常的に多くの人が訪れる施設の近くを選ぶことが非常に効果的です。買い物や他の用事のついでに、気軽に立ち寄りやすい立地であれば、患者にとって利便性が高まり、リピート率の向上にもつながります。特に、スーパーは週に2~3回利用されることが多いため、その隣にクリニックを開業すれば、買い物時に自然と認知され、通りがかりの患者も増えやすいと言えるでしょう。
4. ショッピングモール: 高い認知度と集客力
ショッピングモール内にクリニックを開業すると、日常的に多くの買い物客が訪れるため、認知されやすく、集患効果が期待できます。特に、他の用事と合わせて受診できる利便性が患者にとって大きな魅力となります。また、モール内のテナントとして開業する場合、初期投資や集客の面で有利になることが多く、新規開業を考える医師にとっても魅力的な選択肢です。
ただし、モール内のどの位置に構えるかが非常に重要です。モールは確かに人が集まりやすい場所ですが、どの場所でも良いわけではありません。人通りが少ない場所や奥まった位置では、認知されづらくなります。集客を意識するなら、メインの出入り口や駐車場からの出入り口、エレベーターやエスカレーター付近、あるいは人気テナントの近くなど、人が集まりやすいエリアを選ぶことが重要です。
また、ショッピングモールの近隣のクリニックも、多くの人の目に触れるため、自然と認知度が高まり、集客効果が期待できます。
5. 住宅街へのアクセスが良い場所: 地域住民の利用を狙う
最後に、住宅街へのアクセスが良い立地も重要です。特に、地域密着型の診療科目を考えている場合、住宅街に近い立地は地域住民の利用が見込めるため、安定した集患につながります。平日は通勤者、週末は地域住民など、時間帯や曜日ごとに異なるターゲット層を狙った集患戦略を立てることが可能です。
郊外で成功するクリニックは、駐車場の確保、道路へのアクセスの良さ、周辺施設との連携などを総合的に考慮した立地選びがポイントです。特に、主要道路やショッピングモール周辺など、人の流れが多い場所を選定することで、集患力を最大限に引き出すことができます。
車社会(郊外)で苦戦しやすい立地
1. 交通量の少ない道路沿い: 認知度の低さが集患に影響
車社会においても、交通量の少ない道路沿いに位置するクリニックは認知度が低く、集患が難しくなります。患者の大半は車での移動を前提にしているため、交通量の少ない場所にクリニックがあっても、目に触れる機会が限られます。場合によっては、車で来る患者よりも、近隣の徒歩圏内に住む患者しか来院しないケースもあるため、広範囲からの集客が期待できなくなります。
2. 駐車場が狭い、または遠い: 来院のハードルが高くなる
車社会では、駐車場の利便性が来院率に直結します。駐車場が狭い、駐車スペースが不足している、あるいはクリニックから遠くにある場合、患者は来院しにくくなり、他のクリニックへ流れてしまう可能性が高くなります。特に具合が悪い患者や、家族に車で送迎してもらうケースが多いことを考慮すると、駐車のしやすさや台数の確保が重要な要素となります。
駐車場が遠い場合、患者は駐車場とクリニックの間を歩く負担を感じ、結果として別のよりアクセスの良いクリニックを選ぶことが多くなります。開業時には、駐車場の台数、位置、アクセスのしやすさを必ず確認しておくことが重要です。
3. 乗降客数の少ない寂れた駅前: 駅が集客力を発揮しないケースもある
車社会での開業を考える際、駅前という立地は必ずしも集客の利点にはなりません。特に、利用者の少ない駅では、車で来る患者にとってのメリットがほとんどなく、駅前にクリニックがあっても集患が難しくなる可能性があります。駅の乗降客数が少なく、駐車場の確保も難しい場合は、駅前という利点が薄れ、逆に来院を妨げる要因となることがあります。
4. 近くに調剤薬局がない: 患者の利便性に影響
ごくまれなケースではありますが、クリニックの近くに調剤薬局がないという立地も、患者の利便性に影響を与えます。もしクリニックが院外処方を行う予定であるならば、周辺に調剤薬局があるかどうかは集患に大きく影響します。調剤薬局が近くにない場合、患者は処方箋をもらった後、遠くの薬局まで移動する必要があり、その不便さが患者離れの原因になる可能性があります。
こうしたケースでは、開業予定の物件に調剤薬局を誘致しやすい条件が整っているかを確認することが重要です。周辺に調剤薬局がない場合でも、クリニックと薬局が協力して患者の利便性を向上させる方法を模索することが有効です。
いずれの地域でも共通して重要な点
- ターゲット層の明確化: 診療科によってターゲット層は異なるため、それぞれのニーズに合った立地を選定する。
- 競合クリニックとの比較分析: 競合クリニックの立地、規模、サービス内容などを徹底的に分析する。
- 地域特性の把握: 人口動態、年齢構成、世帯数、所得レベルなどの地域特性を把握する。
- 交通アクセスと駐車場の確保: 患者がスムーズに来院できるよう、交通アクセスと駐車場の確保を徹底する。
- 周辺環境の調査: 住宅地、商業施設、病院、薬局など、周辺環境を調査し、患者にとって利便性の高い立地を選ぶ。
まとめ
クリニック開業における立地選定は、多角的な視点から慎重に行う必要があります。中心部か郊外か、また、診療科によって最適な立地は異なります。
空白地だからといって、どの場所を選んでも良いわけではありません。需要が供給を上回っている地域であっても、将来的に競合が参入しやすければ、長く安定した経営が難しくなる可能性があります。参入障壁の高い立地を選ぶことで、競合との差別化を図り、持続的な成長を目指しましょう。
地域特性や競合状況を分析し、自院の強みを活かせる立地を選ぶことが成功への近道です。