クリニック開業に適したテナント物件の選び方
クリニックを開業する際、適切なテナント物件の選定は、開業後の経営や診療の質に直結する非常に重要なステップです。物件選びの成功が、初期投資の削減やスムーズな診療の実現に繋がります。物件選びの際に注意すべきポイントについて詳しく解説します。
クリニック開業に適したテナントの種類と特徴
内装の状態別費用相場
内装の状態 | 特徴 | 費用相場 |
---|---|---|
スケルトン | 一から内装を設計 | 高額 |
事務所仕様 | 天井や床、照明などが設置済み | 比較的安価 |
居抜き | 前テナントの設備が残っている | 最も安価 |
1. スケルトン物件の利点と注意点
スケルトン物件は、内装がすべて取り除かれた状態の物件で、自分のクリニックの理想像を自由に設計できる点が大きな魅力です。一から内装を作り上げることで、診療科や医療機器に合わせた最適な空間を実現できます。しかし、その反面、内装工事や医療設備の導入に多額の費用がかかる点に注意が必要です。また、退去時に原状回復義務が生じるため、そのための費用も見込んでおく必要があります。
2. 事務所仕様物件の活用
事務所仕様の物件は、すでに基本的な内装が整っているため、スケルトン物件に比べて工事の規模が小さく、比較的短期間でクリニックとして開業できる場合があります。基本的な内装が完成していることから、初期コストを抑えることも可能です。ただし、医療機器の導入に伴う水回りや電気設備の強化が必要になることも多いため、物件選定時にその適性を十分に確認する必要があります。
3. 居抜き物件の魅力とリスク
居抜き物件は、前のテナントが残した内装や設備をそのまま利用できる物件です。前のテナントが医療機関であった場合、既存の医療設備を流用できるため、初期投資を大幅に抑えられることが大きな魅力です。ただし、既存の設備が診療内容に適合しない場合には、改修や設備の入れ替えが必要となるため、その際のコストと手間を見積もっておくことが重要です。物件の状態や使い勝手を十分に検討したうえで判断しましょう。
クリニック開業におけるテナント物件選び:仕様の詳細と注意点
・広さとレイアウトの考慮
クリニックの診療科目や提供するサービスによって、必要な面積は異なります。例えば、内科や皮膚科などの一般診療であれば、診察室、待合室、受付、スタッフルームを含めて、おおよそ50〜100平方メートルのスペースが目安です。しかし、整形外科やリハビリ施設を併設する場合は、リハビリ用の広いスペースが必要となり、150平方メートル以上を確保することが求められます。
また、診察室や待合室の配置、動線も重要です。診察室が待合室から遠すぎると患者が迷いやすく、利便性が損なわれる可能性があります。受付、診察室、トイレなどを分かりやすく配置することで、患者の快適さを確保し、リピート率の向上につながります。患者の流れをスムーズにするため、診察室、処置室、検査室などの配置を工夫することも大切です。また、医療機器の設置場所やスタッフの動線も考慮する必要があります。
クリニックには、受付、待合室、診察室、処置室、トイレ、更衣室、スタッフ用休憩室などのスペースが必要です。診療科によっては、特別な検査室や手術室も求められる場合があります。スペース設計では、動線や機能性を重視し、快適で効率的な診療空間を目指しましょう。
・医療機関に適した電気・水道設備
クリニックには特別な電気設備や水道設備が必要になることがあります。たとえば、X線やMRIなどの大型医療機器を使用する場合、通常のテナントよりも多くの電力を消費するため、物件の電気容量が十分かどうかを確認する必要があります。電力が不足している場合、工事が必要になることがあり、その際の費用も考慮しなければなりません。
また、歯科や内視鏡検査を行うクリニックでは、多くの水を使用するため、水道の供給量や排水能力も重要です。医療行為に伴う特別な排水処理が必要になる場合もあるため、物件の水道配管や排水設備がそれに対応できるか事前に確認しておくべきです。
・保健所の基準をクリアする
内装工事に入る前に、必ず保健所へ確認を行い、必要な設備や基準を満たしているか確認しましょう。特に、給排水設備や換気設備は、衛生面からも非常に重要です。後から基準に合わないことが判明すると、多額の費用と時間を失う可能性があります。
・バリアフリー対応の重要性
高齢者や体の不自由な方も来院することが多いクリニックにおいて、バリアフリー対応は非常に重要です。たとえば、車椅子の患者がスムーズに移動できるよう、エレベーターの有無や段差のない設計になっているかを確認することが必要です。また、広い廊下や自動ドア、車椅子対応のトイレが設置されているかどうかも、患者さんにとって重要なポイントです。
特に、2階以上の物件を検討する場合、エレベーターがないと高齢者や身体障がい者にとってアクセスが不便になるため、できるだけ1階の物件を選ぶか、エレベーターの設置が可能かどうかも確認しましょう。
・ 防音対策の必要性
クリニックにおいて、患者のプライバシー保護は重要な要素の一つです。診察室での会話が待合室に聞こえてしまうのを防ぐために、防音対策が必要です。物件の防音性能や、壁やドアの遮音性を事前に確認しておきましょう。特に、隣接する店舗や住居があるテナントビルでは、診療中の音漏れが他のテナントに迷惑をかけないような対策が求められます。
また、小児科や歯科など、子どもが多く来院するクリニックでは、待合室や診療室での騒音対策も重要です。患者さんがリラックスできる環境を提供するためにも、防音性能を高める工夫を行いましょう。
補足:将来の移転や閉院も視野に入れて立地を選定する
クリニックを開業する際には、将来の移転や閉院の可能性も考慮して立地を選定することが重要です。例えば、人口減少が進む地域や、競合クリニックが増加する可能性がある地域は避けるべきです。
まとめ
クリニック開業に最適なテナント物件を選ぶためには、それぞれの物件の特徴を理解し、自分のクリニックに合った物件を選ぶことが大切です。また、立地や建物、内装、設備、契約条件など、様々な要素を総合的に判断し、将来のことも見据えて物件を選定しましょう。